ランデザインスタッフの日記

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2015-07-13

カリグラフィーとタイポグラフィー



長らく日本ではカリグラフィーは女性の習い事、タイポグラフィーは書体や文字組の専門分野として別の道を歩んできたと思います。しかしここ数年、お互いに接点を持ち始めていると感じていました。タイポグラフィーのイベントでカリグラファーが文字を書いて、文字の美しさと書く技術にデザイナーたちがびっくりすることもあれば、デザイナーがカリグラフィーをはじめたり、カリグラフィーのWSにデザイナーが参加したりすることも見受けられるようになりました。書籍や雑誌でも、書体の原型は2000年前に書かれたローマンスクリプトにあるという話も見受けられます。昨年開催された竹尾ペーパーショーの作品の1つが、竹尾の紙にカリグラファーの三戸美奈子さんが文字を書いた作品だったのも印象的でした。書いている様子のビデオもあり、思わず凝視した人も多かったのではないでしょうか。

カリグラフィーとデザイナーの接点ができてきたとはいえ、紀元前から18世紀くらいまでいろいろな書体が生まれては消えたカリグラフィーの書体の多くはまだまだ知られていないように感じます。今パソコンで打つことができる多くの書体は、カリグラフィーのさまざまな書体にさかのぼることができ、カリグラフィーの歴史を知ることで書体の造形的な特徴であったり時代背景が見えてきます。タイポグラフィーに関わる人も、最近はカリグラフィーって大切ではないのかなと思い始めているように思います。
自分自身、カリグラフィーの書き方や発想を活かしてデザインをするようになってしばらく経ち、自分の中でいろいろな要素を消化しはじめてきたところです。
そんな中で、先日神戸芸術工科大学のタイポグラフィーの授業で、カリグラフィーを教えてほしいという話しがありました。カリグラフィーを書くだけならプロのカリグラファーが適任ですが、デザイナーの自分としては文字を書きながら書いた文字がどう今の書体につながるのか、書き文字と書体の共通点や違いについて話をしたいと思い、テキストを作って実習をしてきました。
また先週は成安造形芸術大学でロゴをデザインするときのカリグラフィーの活かし方などについて講義をしました。この書体は17世紀にフランスで生まれた書体が元になっているよとか、クラシックな形もこう変えたらモダンに見えるよという話など学生は興味深く聞いているように見えました。
今回、授業内容を考えながら自分自身の興味も膨らみ、これからもカリグラフィーとロゴや書体の関係を掘り下げていきたいと思うことになったこの頃の出来事でした。

写真は神戸芸術工科大学での授業の様子です。大学と学生さんには許可を得て掲載しています。

by Nami | 2015-07-13 | column

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