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2009-12-25
先日、扇町マテリアル会議のつながりで
「アトリエ凹凸」という銅版画の工房を見学させていただきました。
阪神久寿川駅から、徒歩30秒。
「ここです」と言われたのは
ごくごく普通のマンションの前です。
(築35年くらいのエレベーターのないマンション、と言えば
ご想像していただけるでしょうか)
階段を登り、普通のマンションの一室のドアをあけるとそこは
コンクリートに白く塗られた壁と壁一面の棚の部屋でした。
工作台、銅版画に使うプレス機、ガラス板・・・。
まさに「工房」です。
アトリエ所属の大坪麻衣子さんに
わかりやすく説明していただき、
さらには偶然居合わせた坪山由起さんには
制作中にもかかわらず、いろいろな作品を見せていただきました。
お話を聞きながら作品を見ると、
いろいろな見方ができて、とても楽しい経験でした。
坪山さんの「『気配』を表現したい」という言葉に
表現者としての芯の強さを感じました。
アトリエ凹凸代表の神野さんには
これまでアトリエが歩んできた道のりのこと、
これからの活動についてのこと、
海外と日本のアートの捉え方の違いについてのことなど
考えさせられる話をたくさんうかがいました。
今の日本はアートが生活に根付いていない。
アートでは生活できない→表現者が減っていく→
アートが生活に根付かない・・・という負のスパイラルの状況のようです。
どうすればもっともっと
アートと私たちの間にある(ように感じる)壁を低くできるのでしょう。
デザインの力が役に立てないかな、と感じます。
神野さんが障子1枚ほどもある作品を出してきて下さったのですが、
その場所がなんと、マンションの廊下。
壮大な銅版画の作品と、築35年強のマンションの廊下のギャップに
思わず吹き出してしまいました。
アートと私たちの間の壁を壊すきっかけは
こういうところにあるのかもしれないなと、ふと思いました。
最後に、大坪さんに銅版画制作のデモンストレーションを
見せていただきました。
その後余分な絵の具を落としていきます。
ここでのこすり具合で、作風がずいぶんと変わります。
「そんなに落としてしまうの?」と思うくらい
しっかりこすり落としているように見えたのですが
繊細な線までくっきり表れて、びっくりしました!
大坪さんの他の作品も、線がとてもきれいです。
目で見て初めて銅版画のことが理解できました。
工程の1つ1つが大切なんですね。
それにしても
銅版画には本当に多様な表現手段があるもので、驚かされました。
次はワークショップで実際に銅版画に挑戦してみたいと思います。