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2010-05-17
「素材からデザインへ」展出展者の名刺をデザインし活版印刷で印刷しました。
デザイン的には今回はヨーロッパの風合いを取り入れてみたいと思い、英語表記にして、色はワインレッドと紫の中間くらいの色にしました。
用紙は白すぎず、レトロすぎない色味で、圧力がかかって少し凹むことを期待して、ハーフエアコットン180kを用いました。
そして金属活字を一文字づつ組んだ(組版された)版で印刷しています。
金属活字を使うということは、限られた書体、大きさから選択することになり、なんでもできてしまうパソコンと比べると、その制約が自分にとっては魅力に感じています。だから今回はデータから起こした版を作らずに金属活字を組んで仕上げてみたかったのです。
結果的に文字組の雰囲気、印刷の仕上がりはイメージ通りとなりました。
ところで、ここで活版印刷について触れておきたいことがあります。
最近、活版印刷の注目度が高いようですが、凹みやかすれを期待した一種の印刷加工のように使われているのではないかと感じています。(まさに私が直前に書いている通りです)
ただ活版印刷を長年されてきた職人さんによれば、インクをかすれさせず、紙を傷めずの微妙な具合がプロの仕事なのだそうです。その圧力の調整のために紙を機械に挟めてみたり、同じ文字でも、長年の使用で版によっては少し太って見えたりするため、大きさが合うように試し刷りしながら文字を入れ替えたりすることを、昨年、「つぼた工芸」さんのところで活版印刷体験させていただいた際に知りました。
職人さんは文字を読むうえで目障りな要素をなくし、読むことに集中できるよう印刷に注力されていたのです。黒子として最善の仕事をされていたということでしょう。
活版印刷機は、今はメーカーがほとんど存在していないので、職人さんが手入れしながら現在も現役でいます。こう考えるとデザイナーが期待するように型押し印刷機のように使うと、負荷が強いのではないかと心配になってきました。。。 活版印刷は職人さんの長年の技術と限られた資源(活字版や機械)を使っているものです。デザイナーとしてそのことは心にとどめておく必要があると思い、ここに記しておきました。